SOLDIERS in FF12

クラウド＆セフィロスの空腹な１日

前編

それは朝７時頃のことだった。

Ｓ：　「クラウド、起きろ！」
Ｃ：　「なんだよ……もうご飯出来たの？」
Ｓ：　「いや、違う。重大な問題が発生したのだ」
Ｃ：　「なに？」
Ｓ：　「ザックスが置手紙を残していなくなったのだ！　これがその手紙だ。」
Ｃ：　「ええと……『旅行（たび）に出てくる。捜さないでくれ　ｂｙザックス』？」

どうやらザックスは前回話に出た（「ザックスの苦労の日々」参照）旅行に行ってしまったようだ。しかも行き先を告げずに。

Ｓ：　「朝食は準備して出て行ったようだからいいが……昼食、夕食が問題なのだ。食費がない上に冷蔵庫には食材も入っていない！」
Ｃ：　「そ、そんな！　大問題じゃないか！」

基本的にこの家の財布の紐はザックスが握っている。何でも屋の仕事の報酬はザックスが受け取っているし、二人がそれぞれの副業で稼いだお金もザックスが預かって貯金したり、家の修繕費や食費などの生活費に使用されている。二人が自由に使えるのは一週間に一度渡される小遣い（結構額は多め）だけだが昨日私用で使ってしまった。ちなみに副業での出費もザックスの許可がいる。

（朝食後）

その１
Ｃ：　「働いて稼ぐか？」

Ｓ：　「俺の魚屋は店を広くするのに改装中だ。商売は出来んぞ」
Ｃ：　「こっちも無理だぞ。ガーディが前に生まれた海チョコボとトリックスターを連れてチョコボのコンテストに行っちゃったんだ。だから店はお休み」
Ｓ：　「何でも屋のほうは依頼がはいっていないしな」
Ｃ：　「クランはどうだ？　なにか依頼がはいってるかもしれない！」

モンブラン：　「仕事はあるにはあるけど……ザックスがいないんじゃ駄目クポ」
Ｃ：　「なんでだよ！」
モンブラン：　「二人だけだと喧嘩の仲裁役がいないクポ。だから安心できないクポ」
Ｓ：　「くっ……（反論できない）」

結果：　無理。二人に対する信用は案外低いようだ

その２
Ｃ：　「そうだ、ティファの店で食べさせてもらえばいいんじゃないか！」

Ｃ：　「なんで気付かなかったんだろ。これで解決だな」
Ｓ：　「どうやってビュエルバまで行くのだ？　飛空挺に乗る金すらないのだぞ？……ザックスめ、銀行の口座の番号ぐらい教えておかんか！」
Ｃ：　「シドに頼んで乗せてもらおう。今日はラバナスタ〜ビュエルバの便のはずだ」

シド・ハイウィンドは飛空挺の操舵士として働いていた。その影では密輸なども行っているらしいが、気にすることはないだろう。

シド：　「あー、悪いな。今日はビュエルバ付近の空域にデスゲイズみたいな竜が大量に入り込んでてよ。今日の便は欠航ってことになったんだ」
Ｓ：　「俺たちで護衛してやる。駄目か？」
シド：　「あんたはともかく、クラウドは乗り物酔いでろくに動けねえだろ？　こっちも雇われの身なんでな、勝手に飛ばしたらクビになっちまうし勘弁してくれ」
Ｃ：　「ならテレポストーンで……」
Ｓ：　「無理だ。今は一個も持っていないし買う金もない……あきらめるしかないか」

結果：　無理。移動手段がないのではどうにもならない。

中編

番外〜その頃のザックス〜

Ｚ：　「着いたぞ。ここがフォーン海岸だ。このハンターズ・キャンプってエリアから出ないように気をつけろよ？」

どうやら旅行の行き先はフォーン海岸だったらしい。まずはテレポストーンを使ってバーフォンハイムに移動し、そこで市場を見物。さらにチョコボを人数分レンタルしてセロビ大地、ツィッタ大草原で景色を楽しんで、昼過ぎに到着した。

Ｚ：　「うう……」
アルバイト改め店員Ａ：　「どうしたんですか、店長。いきなり泣き出して」
Ｚ：　「いや、ようやく平穏にバカンスが楽しめるんだなって思うと涙が・・・平穏って素晴らしいな」

昔はずっとソルジャーとして戦いに明け暮れ、復活してからはクラウドとセフィロスの面倒を見続けていた。たまに取れた休暇にはろくなことがなかったし……。だがここフォーン海岸なら大丈夫だろう。コスタ・デル・ソルのように海からジェネシスコピーがわらわら出てきたりといったことはないはずだ、多分。

店員Ａ：　「苦労してるんですね……ゆっくり休暇を楽しんでください」
Ｚ：　「ああ！……とりあえず、スクワットだな」
店員Ａ：　「……；」

その３

Ｓ：　「よし、トレジャーで稼ごう」

Ｓ：　「そこらのモンスターから盗んで密猟しまくれば食費くらいすぐに稼げるはずだ。武器やレアアイテムが手に入ればなおよしだ」
Ｃ：　「よし、さっさと行こう！」

西門の兵士：　「すまないけど開けられないんだ。正午辺りから近年まれに見るほど激しい砂嵐になってね」
南門の兵士：　「同じくギーザ草原も集中豪雨でね。フィールドに出ても河の水が増水してて道が完全に沈んでるんだ。あんたたちなら泳いでいけそうだけどギガントードの大群に襲われるよ？」

Ｃ：　「今のギーザ草原にはいかないからな！　カエルの大群なんてお断りだぁ！」
Ｓ：　「残るは東ダルマスカ砂漠か……こっちは大丈夫だろう？いるのはサボテンと狼とワイルドザウルスだけだ」

西側と比べて盗めるアイテムは安いものばかりだが、ないよりはましである。それにワイルドザウルスを仕留めれば食材が確保でき、なおかつ砂海亭に肉を売れば更に収入が期待できる。二人のレベルなら安全かつ確実な方法だ。しかし……

東門の兵士：　「すまないが門が開かなくなってね。ただの故障だから明日には直ると思うけど今日は通れないよ」

現実は無情だった。
Ｓ：　「なぜだ……なぜこうも悉く立てた対策が潰されていくのだ!?」
Ｃ：　「ここまで来ると仕組まれてるんじゃないかって気がしてくるな。まさか街の住民全員でおれたちを飢えさせようとしてるんじゃあ……」
Ｓ：　「それはさすがに考えすぎだろう。こうなったら門を切り崩してくれる！」
Ｃ：　「落ち着けよ、セフィロス。門番の口を封じてもそれじゃ犯人がすぐにばれるだろ？　この街でそんな真似ができる奴なんて限られてるんだし。フレアとかデジョンとかの魔法で穴を開けたほうがいい」
東門の兵士：　「やめてくれ！　どっちにしたって俺が死ぬじゃないか！」
Ｃ＆Ｓ：　「「ちっ」」
東門の兵士：　「舌打ちするなーっ！」

二人とも、空腹のためか思考が危険になっているようだ。

Ｃ：　「ハーディ、ソルベ、ホルンがガーディの応援に行ってるからモグシーは使えないし……」
Ｓ：　「ガラムサイズ水路に行くと苦情が来るし」

クラウドたちが水路に下りると、グレートキング（モルボル系）が遊んで遊んでと多数寄ってくるのだ。そしてくさい息でご挨拶。ダウンタウンと水路がつながっているということはくさい息の臭いがダウンタウンにも風に乗って広がってしまうということで……住民の苦情ももっともだろう。

Ｓ：　「無念だが……別の手を考えよう」

結論：　惜しくも失敗

後編

番外〜その頃のザックス２〜

フォーン海岸にて

Ｚ：　「実はな、今回の旅行には休暇以外にもう２つ目的があるんだ」
店員Ａ：　「なんですか？」
Ｚ：　「一つは家事全般をやってる俺の苦労を身をもって知ってもらって俺という存在の重要性を理解してもらうこと。もう一つは少しは家事を覚えてもらおうと思ってな」

何でも屋ではザックスが大抵の家事を担当している。セフィロスも料理をするが時々でしかないし、洗濯や掃除を他の二人に任せると余計な手間が増えるのだ。

Ｚ：　「せめて料理くらいは出来るようになってくれると助かるんだけどなー」

残念だがそれは無理そうである。現在ラバナスタにいる二人はそれ以前の問題（食材入手）で躓いていた。

ラスト

Ｃ：　「こうなったらお金はあきらめて食糧だけでも確保しよう」

Ｓ：　「しかしどうやって食糧を手に入れるつもりだ？　外には出られんぞ」
Ｃ：　「たしか市街地北部にレンっていう丸々としたコッカトリスがいたはずだよ」
Ｓ：　「……しかしあれはギーザ草原の集落の一羽ではなかったか？」
Ｃ：　「この非常時にそんなこと興味ないね」
Ｓ：　「迷惑がかかるのではないか？　やめておけ」
Ｃ：　「おれは腹が減ってるからな。空腹が満たされればいいんだ。なんでコッカトリスが街中にいる？　出所はどこだ？……んなことはどうだっていいんだよ！」
Ｓ：　「仕方がないか……黙っていればばれんだろう」

Ｃ：　「待てー！」
レン：　『嫌に決まってるだろ！』
Ｃ：　「セフィロス、そっちに行ったぞ！」
Ｓ：　「ああ！……くっ、ちょこまかと逃げおって……！」
レン：　『喰われてたまるかー！！』
Ｃ：　「メテオレイン！」
Ｓ：　「コラプス！」
レン：　『当たるか！』

Ｃ：　「駄目だ、つかまらない……回避が高すぎる」
Ｓ：　「俺としたことが、コッカトリスに遅れをとるなど……」
Ｍ：　「クラウド、セフィロス、何やってるクポ！　街中で強力な技や魔法を連発するなんて」
Ｃ：　「ええと……かくかくしかじかというわけで」
Ｍ：　「なるほど……それならお金を貸してあげてもいい……」
Ｓ：　「本当か？」
Ｍ：　「……かと思ってたけど、流れ弾に当たって壊れたセントリオ本部の壁の修理代を請求させてもらうクポ」
Ｃ：　「うわぁぁ！」

Ｃ：　「あのあとモンブランにクランメンバーの心構えを延々説教されたあげくお金は貸してもらえなかったし……どうしよう」
ヤズマット（以下Ｙ）：　『あ、おかえり』
Ｓ：　「なあ、クラウド……」
Ｙ：　『ど、どうした？』
Ｓ：　「家のドアあけたらそこには食べ応えありそうなやつが目の前にいたな」
Ｙ：　『セフィロス？　何言ってるんだ？　ついでに目がヤバいぞ。クラウドも何か言ってやってくれ！』
Ｃ：　「何日分になるかな」
Ｙ：　『クラウド、お前もか！　まずい、空腹のあまり思考が危険になってる』
Ｃ：　「ううっ。ヤズマット、あんたの尊い犠牲は無駄にはしないよ（涙）」
Ｓ：　「いざ語り継がん。君の犠牲、世界の終わり……」
Ｙ：　『なんだそれは!?』
Ｓ：　「『ＬＯＶＥＬＥＳＳ』だ。知らんのか？」
Ｙ：　『知るかーっ！』
Ｓ：　「せめて一思いに殺ってやろう」
Ｙ：　『こうなったらこっちも本気で相手してやる！　エスナ！　更に絶対防御！』
Ｃ：　「くっ、こっちの攻撃がきかない……いつの間にこんな技を！？」
Ｙ：　『ここで生活してくのには必須のスキルだからな。最近覚えた』
Ｓ：　「図に乗るなよ……」
Ｙ：　『やられてたまるか！　ホーリー！』

Ｓ：　「（回復した）絶対防御が解けたようだな……心ない天使！」
Ｙ：　『なんの、フルケア！』
Ｃ：　「超究武神覇斬ｖｅｒ．９９！」

翌日ザックスが帰ってきたとき、そこにはズタボロになった２人＋一匹がいたとか……

結果：　ドロー

おまけ

Ｚ：　「……（呆然）なんで家がこんなボロボロに……」
住民Ａ：　「ああ、ザックスさん！　どこに行ってたんですか!?」
Ｚ：　「ちょっと旅行にな。それよりこれは一体……」
住民Ａ：　「理由はわからないんですけど、クラウド君とセフィロスさん、それにでっかいモンスターが派手に暴れて……」

Ｚ：　「さて……なんでこんなことをしたのかキリキリ白状しろ」
Ｓ：　「その前にこの鎖と氷をどうにかして欲しいのだが」

そう、クラウド、セフィロスは鎖で雁字搦めにされたあげくブリザガで首から下を凍らされていた。ちなみにヤズマットは再びミニマムで小さくされて檻に入れられている。自力で自由になれないこともないのだが、目の前のザックスがミネルヴァも裸足で逃げ出すほどの殺気を放ちまくっているため逃走は無理そうだ。

Ｚ：　「却下だ。話さないのならブリザガでさらに口と鼻をふさぐぞ」
Ｃ：　「ザックス、なんだかいつもと違うぞ？落ち着けよ」
Ｚ：　「いいからさっさと説明なり言い訳なりしてくれよ。それ如何でお前らの処分が決まる」
Ｃ：　「全然落ち着いてないよ！」
Ｙ：　『ええと……俺も詳しいことは知らんのだが、二人の言動から推測するに食べ物がなくて俺を喰おうとしたらしい」
Ｚ：　「……は？」
Ｓ：　「うむ。食材を買う金がなかったのでな。色々資金を集めようとしたのだが……（中略）……という理由で悉く断念せざるをえなかったのだ」
Ｃ：　「で、腹減って帰ってきたら食べ応えありそうなヤズマットがいたからつい……」
Ｚ：　「……アホか」
Ｓ：　「なんだと！　元はといえばお前が金の在り処を教えずに旅行に行くのが悪いのではないか！」
Ｃ：　「そうだそうだ！」
Ｚ：　「置き手紙の裏に書いたはずだぞ。」
Ｃ＆Ｓ：　「「……え？」」
Ｚ：　「だからお置き手紙の裏に書いたはずだって」

手紙の裏
『追伸：　食費など諸々の費用のために１万ギルほど置いていく。仕事机の引き出しに入ってるから使っていいぞ。おつりは自由にしていい』

Ｃ＆Ｓ：　「………………（呆然）」
Ｙ：　『裏に書いてある続きに気がつかなかったとはなんて古典的な……』
Ｚ：　「それに色々考えたみたいだけどよ、普通に働くって選択肢はねえのか？」
Ｓ：　「しかし何でも屋もクランも依頼がなかったのだ」
Ｚ：　「バイトは？　ダラン爺とかに頼めば一つや二つ斡旋してくれると思うが」
Ｃ＆Ｓ：　「「あ」」
Ｚ：　「セフィロス、あんたまで気付かないなんて……お前はもう俺の知ってるセフィロスじゃないのか？」
Ｓ：　「………」
Ｙ：　『それはさておき……ザックス、これまでの話から分かるように俺が戦ったのは正当防衛だ。なので檻から出してくれ』
Ｃ：　「ずるいぞ！　一人だけ逃げようなんて！」
Ｙ：　『ずるくない！　前回（後編）をよく見てみろ。俺はホーリー以外攻撃技は一度も出してないぞ？　ホーリーも標的以外に与える被害はないに等しい。街の破壊は全てお前らの攻撃によるものだ』
Ｓ：　「前回って……その発言は少々危険だぞ」
Ｚ：　「確かにお前は情状酌量の余地ありだな。今回は許してやろう」
Ｃ：　「おれたちは？」
Ｚ：　「半年間小遣い９５％カットのうえ、クラウドは二週間肉食禁止、同じくセフィロスは酒禁止だ。さらにこれから一ヶ月ほど家事を叩き込んでやる。あと壊れた街は直しとけよ。セントリオの壁の修理代も自分で払うこと」
Ｃ：　「嫌だーっ！」
Ｚ：　「クラウド……大灯台の地下に放り込まれたいか？」
Ｃ：　「うっ……」

セフィロスはまだましだったが、それから一ヶ月、クラウドにとっての地獄は続いた。今まで人任せだったことを全部覚えなければいけないのだ。脳の処理能力を超えてしまって知恵熱を出すことなどしょっちゅうだった。そして……

Ｃ：　「ガラスはこっちだったっけ……？　アルミ缶とそうでないのはどう見分けるんだったかな」
Ｚ：　「まるで成長していない……一度ティファに預けてみるか？」

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