１
彼は夜空を見あげた。
すっかり晴れあがった黒い天蓋に、ミルクを流したような天の川。星々はきらきらと輝いているが、月はもっと強くその存在を強調して薄い黄色に輝いている。
そのうち、なにかが起こる。彼はそんなふうに感じていた。
なにかが起こるはず……それなのに、彼は身体じゅうの倦怠感に悩まされていた。
足の爪は剥がれ、嘴はひび割れてきている。翼はどんどん痩せていくし、全身の羽はぼろぼろに近い。
以前は気前よくシルキスの野菜とレイゲンの野菜ばかり与えてくれていたはずの飼い主は、最近では、「太りすぎだ」と言って、ちっともおいしいものを食べさせてくれなくなった。
そしてその飼い主も姿を見せなくなり、それよりもっと小さい子どもという連中が不器用に羽づくろいをしてくれるようになった。ときどき、うっかり柔毛を引っこ抜かれるので、その痛みに耐えるたび、ひどいストレスが溜まる。
なぜ、自分たちがこんな目に遭わなければならないのだろう。
こんな扱いに甘んじていなければならないことなど、これっぽっちもないはずなのに。
自分たちは、常に幸せを求める権利があるのだ。
それがチョコボというものだった。
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