FF7 MEMORIES

「……ダイン……おまえなのか？」
「懐かしい声だな……忘れようにも忘れられない声だ……」
「いつか会えると信じていた……。オレと同じ手術を受け、どこかで生きていると……聞いてくれ、ダイン、おまえに……」
「声が……聞こえるんだ」
「……？」
「聞こえるんだよ、エレノアの声が。お願いだから、バレットを恨まないでいてってさ。だから、あんたを追っかけるのはやめといた……」
「……自分の愚かさは知っている。許してくれとは言わない。でもよ……こんなところでなにをしてるんだ？　関係のない人間を殺してどうなる？　なぜだ？」
「……なぜ？　理由を聞いてどうする？　それで殺された人間は納得するのか？　神羅の言いぶんを聞けばコレル村の人間は了解するのか？　理由なんてどうでもいい！　与えられるのは銃弾と不条理……残されるのは絶望と無の世界……それだけだ！」
「………」
「それでも聞きたいか？……なら、教えてやろう。俺はな、壊してしまいたいんだよ。この街の人間を。この街のすべてを。この世界のすべてを！　この世界にはもう、なにもない。コレル村、エレノア……マリン……」
「マリンは……マリンは生きている」
「……？」
「あのあと、オレは村に戻った。もう逃げられない……そう思った。だからせめて、最後はミーナのそばにいたいと思った。そこであの子を……おまえの娘、マリンを見つけた」
「………」
「マリンはミッドガルにいるんだ。いっしょに会いにいこう、な？」
「そうか……生きているか……わかったよ、バレット。やはりおまえと戦わなくてはならないな」
「なんだと？」
「エレノアやひとりで寂しがってる。マリンも連れていってやらないとな」
「ダイン……正気か？」
「マリンだって、母さんに会いたがってるだろ？」
「やめろ、ダイン！　オレはここで死ぬわけにはいかねえんだ！」
「そうかい。俺はあの日から命は捨ててるぜ」
「やめてくれ！　おまえとはやりたくねえ！」
「バレット！」
「クラウド、手を出すな！　これはオレの問題だ！」

「うっ！　来るな！……俺はあのとき、片腕と……いっしょに、かけがえのないものを失った……どこで……食い違ったのかな……」
「ダイン……わからねえよ。オレたち……こういうやりかたでしか決着をつけられなかったのか？」
「言ったはずだ……俺は……壊してしまいたかったんだよ……なにもかも……この狂った世界も……俺自身も……」
「マリンは！　マリンはどうなるんだ！」
「……考えてもみろ……バレット……あのとき、マリンはいくつだった……？　いまさら……いまさら俺が出ていったところで、あの子には……わかるはずもない……それにな……バレット……マリンを抱いてやるには、俺の手は……少々汚れすぎちまったのさ……」
「………」
「バレット……そのペンダントをマリンに……エレ……ノアの……女房の……形見……」
「わかった……」
「……そうか……マリンが……もう……四つ……か……バレット……マリンを……泣かせる……な……よ……」
「ダイン……？　ダイン！　ダイーーーン！……ダイン。おまえと同じなんだ……オレだって……オレの手だって……汚れちまってる……うおおおーーーー！」

「なにか用か？」
「上へ行きてえ」
「だからよ、ボスの許可をとってチョコボレースに……」
「ダインはわけがあって話ができなくなった。その代わり、これをもらってきたぜ」
「ゲッ……」
「上へ行きてえ」
「わ、わかったよ。……ダインをやったのか？　いや、そうなんだろうな。そんなもの持ってるんだからな。そうか……ダインが死んだか。これで、ここも少しは落ち着いた土地になるぜ。なにしろ、ダインは誰彼構わず……」
「てめえになにがわかるってんだ！」
「わわわ、わかった！　いや、なんにもわかってないです。す、すいません」
「それじゃあ、ここから出してもらおうか？」
「ん？　あんたたち、なにか勘違いしてないか？　前に少し言ったと思うが、ここから出る手段はただひとつ、ゴールドソーサーで行なわれているチョコボレースで優勝するしかねえ。それに、一度に上に行けるレーサーはたったひとりだ」
「なんだと！」
「だーーっ！　いくら脅してもダメだ！　このルールだけは変えるわけにはいかねえ。ここの規律が滅茶苦茶になっちまう！　これは譲れねえ！　ひ、ひとりは上に送ってやる。あとは、そいつがディオと取り引きするなりなんなりしな」
「ちっ！　しょうがねえ。クラウド、おまえ行ってこい。オレたちは下で待ってるからよ。さっさとチョコボレースとかいうのに勝って、こっちもなんとかしろ！」

　そうね、クラウド。わたしたち待ってるから、頼むわよ！
　うん、クラウド、頑張ってね。
　そうだな、クラウドが適任だろう。
　じゃ、クラウド、頼んだよ。

「は、話はまとまったか？　じゃあ、あとはマネージャーか。チョコボレースの登録や調達をする役目なんだが……」
「はーい、話、聞かせてもらっちゃった」
「エストか？」
「わたしがマネージャーやるわ」
「まあ、文句はねえが……こいつはエスト。見た目は変だろ？　でも、チョコボレースのマネージメントで右に出るやつはいねえ」
「しっつれいな言いかたね。まあ、いいわ。よろしく、クラウドさん」
「よし、クラウドさんとやら。柱のエレベーターから上に送ってやる。詳しいことはエストから聞きな」

「そう、そんなことがあったの。わかったわ、ディオ園長にはわたしから話をしておくわ。あなたはとりあえずレースに集中して。そうそう、さっきの話の続きだけど、チョコボレーサーにはいろんな人がいるの。犯罪者だけのレースってわけじゃないのよ。名声のために戦いつづけている人、お金のために戦う人、レースにのみ生き場所を感じている人……あなたみたいな人を含めてね」

　あっ、そうだ、チョコボの騎乗方法教えておくわね。

　ああ

えーと、まず【SELECT】ボタンでオートとマニュアルを切り替えるの。簡単に言うと、自分で命令するかチョコボの好きに走らせるかね。でも、自分の思うとおりにはなかなか走らないわよ。チョコボとの仲がよくないということを聞いてくれないから。こればっかりは今回はしょうがないわね。けど、わたしの用意するチョコボはおとなしい子が多いから、結構うまくやれると思うわ。それから、自分で命令しているときに□ボタンでスピードアップ、×ボタンでスピードダウン。ただし、チョコボの本来持っている能力以上のスピードを出すとどんどんスタミナが減ってくるの。それと方向キーの左右でチョコボを左右に、○ボタンで鞭を入れて一気にスピードをあげられるわ。もちろんスタミナの消費は激しくなるけどね。あと、気の悪いチョコボは自分のペースがわからなくて、すぐスタミナを使いきっちゃうの。そういうチョコボはすぐにマニュアル（自分で動かす）操作にしてスピードを落としてやるといいわ。最後にね、せっかちな人にお勧めなんだけど、一、二着のチョコボがゴールしたあとに【START】ボタンを押すと、途中でレースを見るのをやめることができるわ」

　興味ない

「新入りかい？」
「こんにちは、ジョー」
「やあ、エスト、今日も美しいね」
「ふふ、ありがと。紹介するわ、クラウド。彼はジョー。現役チョコボレーサーのトップを行く人よ」
「以後お見知りおきを。クラウド君、しかし、エストがじかについているということは……」
「そ！　期待の新人ってところかしら。なんてったって、下に来てたった一日でここいにいるんだから！」
「なに！　なるほどな……いったい、下でなにをした？　いや……ここで過去を訊くのはタブーだったな……おもしろいよ……きみとはまた会えそうな気がする。では、また会おう、クラウド君」

「じゃあ、わたしはチョコボの手配をしてくるわ。しばらくここで待っててね。すぐ戻ってくるから」

　あんましいい気になるんじゃねえぞ。腕っ節なんてレースになりゃあ、関係ねえからな。
　話すことはねえ。
　………。

『まもなくレースがスタートします。次のレースに出場のチョコボレーサーは、パドックまでお越しください。繰り返します……』
「クラウド。はい、お待たせ。クラウドも次のレースに登録しておいたわ。まあ、わたしの用意したチョコボなんだから、簡単には負けないわよ。そうそう、も一度乗りかたを聞いておく？（そうだな／いや、いい）　それじゃあ、頑張ってきてね」

　優勝
　おめでとう！　これで晴れて自由の身よ。

　２位
　残念だったわね。もうちょっとだったんだけどね。じゃあ、もう少しいいチョコボを探してくるわ。しばらく待っててね。

　３位
　残念だったわね。もう少し期待したんだけどな。

　４位以下
　残念だったわね。けど、内容が悪すぎるわ。

２回目
　けど、さっきのチョコボで勝てないとなると……わかったわ。もう最っ高のチョコボを探してくるわ。

３回目以降
　嘘でしょ!?　いまのチョコボ以上なんてもういないわよ。もう、本当に勝ちたいのならSELECTボタンでオートモードにして走ってみてよ。

「あっ、そうだ。これ、園長からの手紙。勝ったら渡すようにって」
『ディオ：　少年なら、みずからの力で勝利を手に入れ、この手紙を読んでくれていると信じている。ダインのことはエスト君から聞いた。少年が勝つことができたなら、私の権限できみの仲間の自由も約束しよう。それと、お詫びと言ってはなんだが、プレゼントを用意した。旅の役に立ててくれたまえ。これでも多忙な身の上、手紙という形で失礼した。では。ディオちゃんより』
「プレゼント？」
『クラウド？　ね、すごいのよ！　いまね、園長の使いとかいう人が来て【バギー】置いていったの。これがあれば【砂漠】も【川】も楽々よ。じゃ、クラウド、外で待ってるね』
（ん？　手紙は続きがある……）
『P.S.　このあいだ、私はセフィロスに会ったぞ。少年たちの年代では彼のファンもいるだろう。サインでももらったらどうだ？　彼はここから南の川を越えて【ゴンガガエリア】に向かったようだぞ』
「セフィロス……」
「じゃあ、お別れね。そうだ、いつか自分のレースチョコボを持てるようになったら、もう一度ここに来るといいわ。またわたしが登録とかいろんなことしてあ・げ・る。また会いましょうね」