FF7 MEMORIES

「すっごーい！　これ、ぜーんぶ、マテリアだわ！」
「外は豊富な魔晄、そして中心部はマテリアの宝庫。これぞまさに約束の地だな」
「約束の地など存在しない。伝説……言い伝え……ばかばかしい」
「想像していたとおりのものがここにある。それでいいではないか？　その堅さが二流科学者の限界だな。どうした？」
「壁のなかよ！　なにか入ってる！　動いてる！」
「ウェポン……本当にいたのか。信じてはいなかった」
「なんだと言うのだ？」
「……ウェポン。星が生み出すモンスター。星の危機に現われてすべてを無にする……ガスト博士のレポートにはそう記されていたな」
「そんなレポートは見たことがない……どこにある？」
「ここだ、ここ」
「きみは隠し事が多いな」

　クラウドたち、大丈夫なのかよう？　しかし、なんだよな。このちっぽけな黒マテリアが星を滅ぼすなんてよ……。な、なんだ!?　おめえら、いまのなんだよ！　あ、あれっ!?　み、みんなっ！　ここ、どこなんだよっ！　どこ行っちまったんだよっ！
　よかった！　バレット、ここにいたのね！
　ティファ！　なんか様子が変なんだよ！　真っ暗になっちまって、みんないなくなっちまった！
　ね、みんなが待ってるの！　クラウドが大変なの！　お願い、来て！　わたしたちを助けて！　あっちなの！
　お、おう、なんだかわからねえが、とにかく行けばいいんだな！

　ねえ、クラウドたち、大丈夫かな……。でもさあ……このちっぽけな黒マテリアが星を滅ぼすなんてさ……。な、なに!?　みんな、大丈夫!?　どうなっちゃったの？　ここはどこなんだ？　オイラをひとりにしないでよっ！
　よかった！　レッド13、ここにいたのね！
　ティファ！　なんか様子が変なんだ……真っ暗になっちゃって、みんないなくなっちゃうし……。
　ね、みんなが待ってるの！　クラウドが大変なの！　お願い、来て！　わたしたちを助けて！　あっちなの！
　う、うん！　よくわかんないけど、とにかくそっちへ行けばいいんだね！

「ウフフフフ……黒マテリア……忘れるなよ」

「社長……なんだかいやーな予感がするわ」
「ふむ……一度飛空艇に帰ろうか。本格的な調査の準備も必要だしな」

「ちょっと！　どこから来たのよっ！」
「……さあ。ここはあんたたちの手には負えない。あとは俺に任せてさっさと出ていけ」
「……おまえに任せる？　ふっ……よくわからないな」
「ここはリユニオンの最終地点。すべてが終わり、また始まる場所」
「クラウド！」

　おう！　助けに来てやったぞ！
　来たよ！　助けに来たよ、クラウド！

「ありがとう……○○。黒マテリアは？」
『クラウド！』

　大丈夫だ。ちゃんと持ってるぜ。
　大丈夫。しっかり持ってるよ。

「ここからは、俺がやる。黒マテリアを……おれに」
『わたしの声、聞こえないの？』

　大丈夫か？　じゃあ、これ。すげえプレッシャーだったぜ。
　大丈夫？　クラウド。それじゃあ、はい。これ持ってるの、怖かったんだ。

『ダメよ、ダメ！　クラウドを止めて！』
「ありがとう、あとは俺が……やります」
「さあ、黒マテリアを……」
「待ってください！　もう少しだけ！　みんな、いままでありがとう。それに……ごめんなさい。……ごめんなさい……すいません。特にティファ……さん。本当にごめんなさい。いろいろよくしてくれたのに……なんて言ったらいいのか……俺、クラウドにはなりきれませんでした。ティファさん……いつかどこかで、本当のクラウド君に会えるといいですね」
「クックックッ……素晴らしい……私の実験がパーフェクトに成功したわけだな。おまえ、ナンバーはいくつだ？　ん？　刺青はどこだ？」
「宝条博士……俺、ナンバー、ありません。俺、失敗作だから、博士がナンバーをくれませんでした」
「なんということだ……失敗作だけがここまで辿りついたというのか……」
「博士……ナンバーください。俺にもナンバーをください……」
「黙れ、失敗作め……」

「あいつは……何者だ？」
「……五年前、セフィロスが死んだ直後に私が創ったセフィロス・コピーのひとつ。ジェノバ細胞と魔晄、それに加えて私の知識、技術、閃きが生み出した科学と神秘の生命、セフィロス・コピー……失敗作だというのが気に入らないが、ジェノバのリユニオン仮説は証明された。ジェノバは身体をバラバラにされても、やがてひとつの場所に集結し、再生する。これがジェノバの『リユニオン』だ。リユニオンの始まりを私は待った。五年が過ぎ……コピーたちは動き出した。ミッドガルに保管していたジェノバのところにコピーたちは集まってくるはず……しかし、私の予想は外れた。そればかりか、神羅ビルのジェノバも移動を始めた……私は天才だ、すぐにわかった。セフィロスの仕業だ。セフィロスの意志はライフストリームで拡散することなく、セフィロス自身としてコピーを操りはじめたのだ……」
「そうです、それが始まりでした」
「コピーたちはどこへ行くのだろう……私にはわからなかった」
「俺自身にもわかりませんでした」
「ただ、わかっていたのは、目的地にはセフィロスがいるはず、ということだ」
「俺、セフィロスを追っていたんじゃなかったんです。セフィロスに呼ばれていたんです。セフィロスへの怒りと憎しみ。それは俺がセフィロスのこと忘れないようにと、セフィロスがくれた贈りもの……セフィロス？　セフィロス？　俺、来ました。黒マテリア、持ってきました。姿を……見せてください。どこにいるのですか？　ああ……セフィロス……やっと会えましたね」

「見たか！　セフィロスだぞ！　やはりここにいたのだ！　素晴らしい！　ジェノバのリユニオンとセフィロスの意志の力！　ライフストリームに拡散することなく、ここに結集したのだ！　クァックァックァッ！」
「宝条博士……なにがそんなに嬉しいの？　どういうことかわかってるの……？　クラウドは黒マテリアを持っているのよ！　セフィロスはメテオを呼んでしまうのよ！　みんな、みんな、死んじゃうのよ！」
「もう、なにを言っても遅い……そろそろここから出たほうがよさそうだ。きみたちもいっしょに来てもらおうか。いろいろと話が聞きたい」
「クラウド！　やめて、やめてよ！　クラウド――――！」

「クラウド……クラウド……どうしたらいいかわからなかった。いつだってそうだった……」

「どうしたね？」
「うう……」
「……可哀相に」
「うぁああ……」
「大丈夫ですか？」
「う……あ……ああ、あ……ぁ……ティファ……？　ティファ……？　ティファ！」
「……？　あ、クラウド！」
「そのとおり、俺はクラウドだ」
「ほんとにクラウドなのね！　こんなところで会えるなんて！」
「ああ、久しぶりだな」
「でも、どうしたの？　具合、悪そうだったけど」
「……そうか？　いや、そんなことはない。普通だ」
「何年ぶりかな？」
「五年ぶりだ」
「………」
「どうした？」
「……本当に、久しぶりね」

「本当は七年ぶりだった。希望どおりにソルジャーになったこと、セフィロスの事件をきっかけに辞めてしまったこと。なんでも屋をやっていること……ニブルヘイムを出てからのこと。いろいろ話してくれたけど……でも……ちょっと変だな。クラウドの話してること、少しずつ変だなと思ったの。知ってるはずのこと知らなかったり、知らないはずのこと知ってたり……わたしはいろいろ確かめたかった。でも、聞いたら……クラウド、どこか遠くへ行ってしまいそうで……それは……嫌だった。……どうしたらいいかわからなかった。時間が必要だって思ったの。だから、クラウドにアバランチの仕事を紹介した。そばにいて、よく見ていたかったの」

「……ぶ……しい……」
「あんっ？」
「眩しいね……」
「しばらくの辛抱だ。ずっと眠ってたからな」
「おなか……すいたね……」
「なあ、どうして訊かないんだ？　あいつのことをよ」
「……怖いから」
「それなら安心してくれ。オレもクラウドがどうなったのかはわからねえ。安心してくれってことはないか……ほかのやつらもよ、無事かどうかさえわからねえんだ」
「きっと……生きているよね。わたし……どれくらい眠ってた？」
「えーと……あれから七日経ってるはずだぜ」
「セフィロスは？」
「まだ復活はしていねえみたいだな。あの大きな光は憶えているか？　北の大空洞の？　あのあと、クレーターは光の大きなバリアで包まれちまった。セフィロスはバリアに守られながら、あの大穴で眠ってやがるって話だ。オレたちは手も足も出せねえ。ただ目醒めの時を待つってだけさ。しかもよ、ウェポンとかいう巨大モンスターが暴れてやがる」
「……ウェポン？」
「クレーターの底で、セフィロスのまわりにいた化け物を憶えてるか？　あれが地上に出てきたんだ。古代に生きていた伝説の巨獣だって話だぜ」
「ウェポン……は、セフィロスを守っているの？」
「わからねえ。でも、とにかくそいつらが現われて世界を襲いはじめた。ルーファウスはそいつと戦ってるのさ。気に食わねえが、たいしたやつだよ。本当はオレたちが斃してえところだが、時間がねえ……」
「時間……そう！　メテオは？」

「諦めなくちゃならないのかな？」
「……さあな」

「おまえを助けるためにクラウドが現われると思っていたが……宝条博士もクラウドを調べたがっていてな」
「クラウドをどうするつもり！」
「セフィロスの分身……か。メテオを呼んでしまったいまとなってはお払い箱のようだな。というわけで、おまえたちにももう用はない。いや、大切な仕事が残っている……かな」
「社長！　処刑の準備が整いました」
「処刑だあ？」
「おまえたちはこの事態を引き起こした者として処刑される」
「この野郎をチラッとでも褒めたのは取り消すぜ」
「ま、最後のひとときを楽しむがいい」
「腕を縛らせてもらおうか」

　ここから先は立入禁止だ。