FF7 MEMORIES

「クラウド……だったね。エアリスのこと、だろ？」
「……すまない。神羅に攫われた」
「知ってるよ。ここから連れていかれたからね」
「ここで？」
「エアリスが望んだことだよ……」
「どうしてエアリスは神羅に狙われるんだ？」
「エアリスは古代種。古代種の生き残りなんだとさ」
「……なんだとさ、だって？　あんた母親だろ？」
「……本当の母親じゃないんだよ。あれは……そう、十五年前……戦争中でね。わたしの夫は戦地に行ってた。ウータイという遠い国さ。ある日、休戦で帰ってくるって手紙をもらったから、わたしは駅まで迎えに行ったのさ。夫は帰ってこなかった。夫の身になにかあったんだろうか？　いや、休暇が取り消しになっただけかもしれない。それからわたしは毎日、駅へ行ったんだ。ある日……戦争中はよくある風景だったね。エアリスを安全なところへ。そう言い残して彼女は死んだ。わたしの夫は帰らず、子どももいない。わたしも寂しかったんだろうね。エアリスを家に連れて帰ることにしたんだ。エアリスはすぐにわたしに懐いてくれた。よく喋る子でねえ。いろいろ話してくれたよ。どこかの研究所みたいなところから母親と逃げ出したこと。お母さんは星に還っただけだから寂しくなんかない……いろいろね」
「星に還っただって？」
「わたしには意味がわからなかったよ。夜空の星かって訊いたら、違う、この星だって言われて……まあ、いろんな意味で不思議な子どもだったね」

「お母さん、泣かないでね」
「エアリスが突然言い出した。なにがあったのかって訊いたら……」
「お母さんの大切な人が死んじゃったよ。心だけになってお母さんに会いにきたけど、でも星に還ってしまったの」
「わたしは信じなかった。でも……それから何日かして……夫が戦死したという知らせが……届いたんだ……とまあ、こんな具合でね。いろいろあったけど、わたしたちは幸せだった。ところがある日……」

「エアリスを返してほしいのです。ずいぶん捜しました」
「イヤっ！　絶対イヤっ！」
「エアリス、きみは大切な子どもなんだ。きみは特別な血を引いている。きみの本当のお母さんの血。【古代種】の血だ」
「もちろん訊いたよ。【古代種】ってなんだってね」
「古代種は、至上の幸福が約束された土地へ我々を導いてくれるのです。エアリスはこの貧しいスラムの人々に幸福を与えることができるのです。ですから、我々神羅カンパニーはぜひともエアリスの協力を……」
「違うもん！　エアリス、古代種なんかじゃないもん！」
「でもエアリス、きみはときどき、誰もいないのに声が聞こえることがあるだろ？」
「そんなことないもん！」
「でも、わたしにはわかっていた。あの子の不思議な能力……一生懸命隠そうとしていたから、わたしは気がつかないふりをしていたけどね」

「よく何年も神羅から逃げつづけることができたな」
「神羅はエアリスの協力が必要だったから、手荒な真似はできなかったんだろうね」
「じゃあ、今回はどうして……」
「小さな女の子を連れてここに帰ってきたんだ。その途中でツォンのやつに見つかってしまったらしくてね。逃げ切れなかったんだろ、きっと。女の子の無事と引き換えに、自分が神羅に行くことになったんだ」
「マリン、だな」
「マリン！　マリンのためにエアリスは捕まったのか！　すまねえ。マリンはオレの娘だ。すまねえ……本当に……」
「あんたが父親かい？　あんた、娘をほったらかして、なにをやってるんだい？」
「……その話はやめてくれ。オレだって何度も考えたさ。オレが死んじまったら、マリンは……ってな。でもよ、答えは出ねえんだ。マリンといつもいっしょにいたい。でも、それじゃあ戦えない。戦わなければ星が死ぬ。おう！　オレは戦うぜ！　でも、マリンが心配だ。いつでもそばにいてやりたい。な？　ぐるぐるまわっちまうんだ」
「……わからないでもないけどね。ま、とにかく二階で眠ってるから、会っておやりよ」

　わたしのせい……わたしがエアリスを巻きこんだから。
　あんた、気にするんじゃないよ。エアリスだってそんなふうに思っちゃいないよ。

　なんか落ちこんじゃう。
　はぁ……。

　マリン、よかった……無事でよかった……。
　父ちゃん、泣いちゃダメだよ。おひげ、痛いよ！
　クラウド！　エアリスを助けに行くんだろ？　すっかり世話になっちまったからな。それに相手が神羅となれば黙っちゃいられねえ！　オレも行くぜ！
　あのね、あのね、エアリスがね、いっぱい訊いてたよ。クラウドってどんな人って。クラウドのこと好きなんだよ、きっと。

　おれにはわからないよ

　ドンカン！

　そうだといいな

　ティファには内緒にしとくね！

　ここで眠れるな……。（眠る／眠りたくない）

「エアリスのところへ行くのね」
「ああ」
「わたしも行くから」
「神羅の本社に乗りこむ……覚悟が必要だぞ」
「わかってるわ。それに、いまは思い切り身体を動かしたい気分なの。じっとしてると……なんかダメ」
「すまねえが、もうしばらくマリンを預かってくれねえか？」
「ああ、構わないよ」
「それから、ここは危険だ。どこかへ移ったほうがいい」
「……そうだねえ。でも必ず迎えに来るんだよ。死んじゃいけないよ」
「神羅ビルにはどうやって？」
「もう、上に行く列車は使えねえ……」
「……とりあえず【ウォールマーケット】に行きましょう。あそこなら、なにかいい手が見つかるかもしれないわ」

　父ちゃん、ティファ、クラウド！　ちゃーんとエアリス助けてきてね。

『ＴＶ：　集え、民衆よ！　魔晄のもとへ！　力こそ真理、神羅こそ未来！　カンパニーに従うことこそ諸君の幸福である！』

　ちょっとそこの団体さん、泊まっていってくださいよ。
　空からいろいろ降ってきたよ。でも全部、戦車好きのじいちゃんが持っていっちゃった。ぼくも欲しかったのに。
　戦車爺さんの話によると、体力さえあれば上のプレートへ行けるそうですよ。ということで、ぜひ体力のつく食事をどうぞ。
　まさか七番プレートが落ちてくるたぁ思わなかったぜ。
　おう、空が落ちてきたから埃だらけだ。また作りなおしだな。
　怖かったよ〜。

　今日は普通の格好じゃな。また、面白そうなことがあれば相談に乗るぞ。

　おう、あんたかい！　悪いけど噂は聞いたぜ。女装が趣味のうえに、キュ〜ッとすり潰すのが好きだって。うちは上品なお客さま以外お断わり！　わかったら、お引き取り願うぜ！

　ここのゴミ、また増えてません？
　そうですわね。七番街が落ちてきたときに、いろいろ降ってきましたからね。
　そうそう、それでですね、武器屋のご主人、降ってきたものを集めてたそうですよ。
　まあ、そのせいでしょうかね。あのご主人、最近怪しいですよ。
　それって、コルネオさんのお屋敷の横手のプレート断面へよく出かけてるって話ですよね？
　あら、よくご存じで！　でも、なにしてるんでしょうねえ？
　そうですよね。気味が悪いですわねえ。

「すんごいの見れんだぜ。ついてこいよ」

　どう？　頑張ってる？

　もっと体力ですね。あのパイプを登り切れば上のプレートへ行けるそうですからね。おや、ご存じない。武器屋の戦車じいさんが詳しく教えてくれますよ。

　あんたも上のプレートへ行くのか？　このジンクバッテリーが必要になるぞ。
　拾ったものを売りつけるのか？
　お、よく知ってるな。修理してあるから大丈夫さ。
　上のプレートへ登るのに、どうしてバッテリーが必要なんだ？
　登ってみりゃわかるよ。三つで300ギルだ。買うかい？

　わかった、買おう
　信じられないな

そうか。自分の目で確かめて、また来たらいいだろう。

　怖いよね。いつこの上のプレートが落ちてくるかわからないね。
　そうよね。上のプレートへ登れるなら行ってみたいね。

　あ！　てめえ……じゃなかった、あなたは！　頼む、助けてくれ！

　助ける

助かった！　じつはあのあと、神羅の連中がドカドカやってきて、情報をリークしただの、役立たずだの……ドンは無理やりどこかへ連れていかれて、それっきり……俺もこんなざまさ。おっといけねえ！　またあいつらが来たら……俺は行くぜ、あばよ！

　放っておく

お、俺はただドンの命令に従っただけなんだ！　助けてくれよ！

「みんな、このワイヤーを登って上に行っちゃったよ。怖くないのかな……ブルブル」
「これ、登れるの？」
「うん。上の世界に繋がってるんだよ」
「よし！　このワイヤー、登ろうぜ！」
「それは無理な話だな。何百メートルあると思ってるんだ？」
「無理じゃねえ！　見ろ！　これはなんに見える？」
「なんの変哲もないワイヤーだ」
「そうかよ？　オレには金色に輝く希望の糸に見えるぜ」
「そうね、エアリスを救うために残された道はこれだけだもんね」
「よくわからない喩えだったが、バレット、あんたの気持ちはわかった。行くぞ！」

「うわー！　すげー、ヒサン……」
「な、こえーだろ？　父ちゃんは神羅ってやつの仕業だって言ってたよ」

「……バッテリーを嵌めれば、あのプロペラがまわりそうだな。武器屋の言葉を信じてみるか」

「ここにもバッテリーが必要だな」

「どうやら、あれに飛び移るしかないようだな。あれがいちばん近づく前にジャンプすればよさそうだな。［失敗：　タイミングが早かった（遅かった）ようだ……］」

　しまった。もうバッテリーがない。