FF7 MEMORIES

「お、おい！　なんだ？」
「上を押してもらおうか？」
「タークス？　罠……か」
「スリリングな気分を味わえたと思うが……楽しんでもらえたかな？」
「くっ……」

「みんなも捕まったのか……？　エアリスはどこだ！」
「安全な場所にいる。あれは貴重な古代種の生き残りだからな。知らんのか？　自らをセトラと呼び、数千年の昔に生き、いまは歴史のなかに埋もれてしまった種族」
「セトラ……あの娘がセトラの生き残り？」
「セトラ、すなわち古代種は我らに【約束の地】を教えてくれる。彼女には期待しているのだ」
「約束の地？　それは言い伝えではないか？」
「だからといって、放っておくにはあまりにも魅力的だ。約束の地は途方もなく豊かな土地と言われているからな。……土地が豊かだということは」
「魔晄エネルギーだな！」
「そのとおり。そこでは金食い虫の魔晄炉など必要ないのだ。豊富な魔晄エネルギーが勝手に噴き出してくる。そこに建設されるネオ・ミッドガル。我が神羅カンパニーのさらなる栄光……」
「ケッ！　夢見てんじゃねえよ！」
「おやおや、知らないのか？　最近では、金と力さえあれば夢は叶うのだ。さて、会見はこれで終わりだ」
「さあ！　退がれ！」
「待ちやがれ！　てめえには言いたいことが山ほどあるんだ！」
「なにかあるなら……秘書を通してくれたまえ」

　ヒソヒソ（逃げられるかな）

　（俺に任せておけ）

ヒソヒソ（クラウド、頼もしい！）

　（ちょっとキビシイな）

ヒソヒソ（弱気にならないでよ！）

　バレットはどうしてるかな
　おい、エアリスは古代種で古代種の本当の呼び名はセトラ。それで古代種は約束の地って場所を知っていて、神羅はその約束の地が欲しい、と。でも、約束の地ってのは言い伝えに出てくるだけで、本当にあるのかどうかはわからねえ。これでいいのか？　約束の地に豊富な魔晄エネルギーがあると神羅の連中は考えてる。ってえことは、神羅はそこに行ったら、また魔晄エネルギーをガンガン吸いあげちまうってことだ。……そこも土地が枯れちまうな。星が……病んでいくわけだ。放っちゃおけねえ！　アバランチ、メンバー募集だ。オレ、ティファ、クラウド……それにエアリスもだな。おめえ、どうだ？……つまんねえ野郎だぜ。

　レッド13はどうしてるかな
　……じっちゃん。
　じっちゃん？　へへへへ。じっちゃん、ねえ……へへへへ。
　なにがおかしい。
　いや、べつに……へへへ。

「エアリスはどうしてるかな」
「クラウド、そこにいるの？」
「エアリス？　無事か？」
「うん、だいじょぶ。きっとクラウドが来てくれるって思ってた」
「ボディーガード、依頼しただろ？」
「報酬はデート一回、だったよね？」
「………………なるほど」
「……!?　ティファ！　ティファもそこにいるの！」
「すいませんねえ。あのね、エアリス、質問があるんだけど」
「なーに？」
「約束の地って本当にあるの？」
「……わからない。わたし、知ってるのは……『セトラの民、星より生まれ星と語り、星をひらく』えっと……それから……『セトラの民、約束の地へ帰る。至上の幸福、星が与えし定めの地』」
「……どういう意味？」
「言葉以上の意味、知らないの」
「……星と語り？」
「星がなにか言うの？」
「人が大勢いて、ざわざわしてる感じ。だから、なにを言ってるのかよくわからない」
「いまも聞こえるのか？」
「わたし、聞こえたのはスラムの教会だけ。ミッドガルはもうだめだって。母さん……本当の母さんが言ってた。いつかミッドガルから逃げなさい。星と話して、エアリスの約束の地、見つけなさい……母さんが言ってた。大人になったら聞こえなくなるんだと思ってたけど……」
「とりあえず眠っておこう」

　………。

「ドアがあいている……いつのまに？　どうしたんだ？」

「ティファ……起きろ！」
「どうしたの？」
「様子がおかしい。外を見てみろ」
「いったい、なにがあったのかしら……」
「きっとここの鍵を持っているはずだ……ほら、ティファはエアリスを。俺はバレットたちを助ける」

　なんだか怖いわ……。
　なにかに襲われた……？

「バレット、レッド13……来てくれ。様子が変なんだ」
「どうやって入ってきた？　どうして扉があいてるんだ？　どうしちまったんだよ？」
「人間の仕業ではないな。私がこの先の様子を見てくる」
「こいつの後始末はオレに任せて、おまえらは先に行け。神羅に見つからねえうちによ！」
「さ、レッド13のあとを追いましょう！」

　……逃げたのか？　ジェノバ……？

「ジェノバ・サンプル……察するに、上の階に向かったようだ。奥のサンプル用エレベーターを使ってな」

　なにか目的に向かっているような……上に……？

「死んでる……神羅カンパニーのボスが死んだ……」
「この刀は？」
「セフィロスのものだ！」
「……セフィロスは生きているのね？」
「……そうみたいだな。この刀を使えるのはセフィロスしかいないはずだ」
「誰がやったっていいじゃねえか！　これで神羅も終わりだぜ！」

「うひょ。こここここ殺さないでくれ！」
「なにがあったんだ？」
「セ、セフィロス。セフィロスが来た」
「見たのか？　セフィロスを見たのか？」
「ああ、見た！　この目で見た！」
「本当に見たんだな？」
「うひょっ！　こんなときに嘘なんか言わない！　それに声も聞いたんだ、うひょっ！　えっと、『約束の地は渡さない』って、ぶつぶつ言ってた」
「それじゃ、なに？　約束の地っていうのは本当にあって、セフィロスは約束の地を神羅から守るために、こんなことを？」
「いいやつじゃねえのか？」
「約束の地を守る？　いいやつ？　違う！　そんな単純な話じゃない！　俺は知ってるんだ！　セフィロスの本当の目的は違う！」

「ルーファウス！　しまった、あいつがいたか！」
「誰なの？」
「副社長ルーファウス。プレジデントの息子だ」

　長期出張中だって聞いてたぜ。
　どんな人なのかしら……。
　血も涙もない、そう聞いたことあるけど。
　名前だけなら私も知っている。

「そうか……やはりセフィロスは生きていたか。……ところで、おまえたちはなんだ？」
「元ソルジャー・クラス1st。クラウドだ！」
「アバランチだ！」
「同じく！」
「……スラムの花売り」
「……実験サンプル」
「おかしな組みあわせだ。さて、私はルーファウス。この神羅カンパニーの社長だ」
「親父が死んだら、さっそく社長か！」
「そうだ、社長就任の挨拶でも聞かせてやろうか。……親父は金の力で世界を支配しようとした。なるほど、うまくいっていたようだ。民衆は神羅に保護されていると思っているからな。神羅で働き、給料をもらい、テロリストが現われれば神羅の軍隊が助けてくれる。一見完璧だ。だが、私のやりかたは違う。私は世界を恐怖で支配する。親父のやりかたでは金がかかりすぎるからな。恐怖はほんの少しで人の心を支配する。愚かな民衆のために金を使う必要はない。私は親父とは違うのだ」
「演説好きなところはそっくりね」
「エアリスを連れてビルから出てくれ！」
「なに？」
「説明はあとだ！　バレット！　本当の星の危機だ！」
「なんだそりゃ？」
「あとで話す！　いまは俺を信じてくれ！　俺はこいつを斃してから行く！」
「わかったぜ、クラウド！」

「クラウド、なんか思いつめてた」
「……わたし、クラウドを待つわ！　みんなはエレベーターで先に！」
「さあ、この先きっとガードが厳しくなるわ。装備を整えておいたほうがいいわね」

「なぜ私と戦うのだ？」
「おまえは約束の地を求めてセフィロスを追う」
「ふむ、そのとおり。ん？　おまえ、セフィロスが古代種だと知っているのか？」
「……いろいろあってな。とにかく、おまえにもセフィロスにも約束の地は渡せない！」
「なるほど。友達にはなれないようだな」

「ルーファウスは？」
「とどめは刺せなかった。面倒なことになりそうだ」