FF7 MEMORIES

　クラウドさまですね。お連れさまが二階でお待ちです。

「クラウド、遅い〜っ！」
「遅いじゃねえか！」
「すまない。待たせたようだな」
「これで、みんなそろったわね」
「さあて……聞かせてもらおうじゃねえか。セフィロス、星の危機。おまえが知ってることのすべてを」
「……俺はセフィロスに憧れてソルジャーになったんだ。いくつかの作戦をセフィロスといっしょにこなすうちに、俺たちは親しくなった」
「親友ってやつか？」
「どうかな……年も離れていたし、セフィロスは自分のことをほとんど話さなかった」
「………」
「戦友……かな。俺たちは信頼しあっていた。あのときまでは……」
「あのとき？」
「戦争終結後のソルジャーの任務は神羅に反抗する人たちを……憂鬱な仕事が多かったな……あれは五年前。俺は十六歳だった……」

「すごい雨だな。おい、気分はどうだ？」
「……大丈夫」
「俺は乗りもの酔いなんてなったことないからな。よくわからないんだ。準備はOK？」
「おい、おまえ。もう少し落ち着け」
「新しいマテリア、支給されたんだ。早く使ってみたくて落ち着かなくてさ」
「……子どもか、おまえは」
「なあ、そろそろ今回の仕事教えてくれよ」
「……今回の任務はいつもとは違う」
「それは嬉しいね！」
「どうしてだ？」
「俺はあんたみたいになりたくてソルジャーになったんだ。それなのに、クラス1stに昇格したのと同時に戦争が終わってしまった。俺がヒーローになるチャンスが減ってしまったわけさ。だから、そういうチャンスがあるなら、俺は絶対にものにしてみせる。な、どんな気分だ？　英雄セフィロスさん？」
「……おまえ、今回の任務が知りたかったんじゃないのか？　今回の任務は老朽化した魔晄炉の調査だ。異常動作を起こしている上に凶暴な動物が発生している。そいつらを始末しつつ原因を見つけ出し、排除する」
「凶暴な動物……場所はどこだ？」
「ニブルヘイムの魔晄炉だ」
「ニブルヘイム……ニブルヘイムは俺の生まれ故郷なんだ」
「そうか……故郷か」
「へ、変な動物が！　トラックに突っこんできました！」
「モンスターのお出ましか」

「セフィロスの強さは普通じゃない。世間で知られているどんな話よりも……すごかった」
「あれ〜？　クラウドの活躍は？」
「おれか？　俺はセフィロスの戦いぶりに見とれてたな」
「………」
「……そして、俺たちはニブルヘイムに着いたんだ」

「どんな気分なんだ？　久しぶりの故郷なんだろ？　どんな気分がするものなんだ？　俺には故郷がないからわからないんだ……」
「ええと……両親は？」
「母の名はジェノバ。俺を生んですぐに死んだ。父は……俺はなにを話してるんだ……さあ、行こうか」

　ヒソヒソ……（うろちょろしてると叱られるぞ）

　退屈なんだよな、見張りって。

　いつものやるか？

　練習でもするか？
　練習……ああ、ポーズの練習か。ソルジャーは常に他人の目を意識しなくちゃならないってか？……どうだっけ？……こうか？
　うまくなったな！
　俺、ソルジャーなんかになりたくないんだよねえ。

　我慢、我慢、仕事だろ？

　ときどき話しにくるからさ。我慢してろよ。

　魔晄の匂いがするな。

「ちょっと待った！　な、あれじゃねえか？　セフィロスが言ってた母親の名前……ジェノバ……憶えてるぞ！　神羅ビルにいた首なしの化物だな！」
「そのとおりだ」
「ちょっと、バレット。クラウドの話、ちゃんと聞かせて。質問はあとよ」
「でもよお、ティファ」
「さあ、クラウド、続けて」
「幼なじみの再会ね！」
「……ティファには驚かされたな。……村はひっそりしていた。みんな、モンスターを恐れて家に閉じこもっていたのかな？　いや、俺たちを恐れていたのか……」

「魔晄炉への出発は明朝。今日は早めに眠っておけ。見張りはひとりでいいから、おまえたちも休んでおけよ。そうだったな……家族や知りあいと会ってきても構わないぞ」

　はあ、どきどきするなぁ。

　どうしてだ？

いつモンスターが来るかわからないんだろ？

　俺はワクワクしてる

……そうだったな。英雄になるチャンス、逃すなよ。

　英雄セフィロスが来るってんで、カメラの用意して待ってたんですよ。セフィロスとモンスターのツーショットが欲しいんです。

　俺の写真を撮れ。

……マイナーな人の写真は撮らない主義なんですよう。

　危険だから家に入ってろ

はいはい……。（偉そうに）おろっ？（こいつは確か……）あんた……クラウド君？　ふーん……そっかぁ、そうなんだあ。

　いや〜、クラウド君、立派になってぇ。

　それなら俺の写真を撮れ

こうしよう、クラウド君、セフィロスといっしょのときに写真撮らせてもらうよ。

　危険だから家に入ってろ

ほいほい……。（偉そうにさ……セフィロスのお供のくせにさ）

　ん？　あんた、神羅の？

　そのとおりだ！

　ふん……若造が偉そうに。

　あんたは？

　私はこの村の……!?　おまえ、クラウドだな？　私を忘れたのか？
　ティファの……。
　そう。ティファの父親だ……娘には近づかないでもらいたいものだな。神羅に頼らなくても自分の村ぐらい守ってみせる！

　この屋敷は……いや、あとにしよう。

　この先は……ニブル山だ。山へ行ったときのことはあとで話すよ。

　はい、いらっしゃい。あれっ？　あんたは……。
　……ここへは入ったのかな？　憶えてないな。
　じれったいぜ！　関係ないなら先を聞かせろ！

　あら、神羅のかたですね。ご苦労さまです。あら、ごめんなさい！　クラウド君だったのね。気づかなくって。
　しんら〜？
　ちんら〜？
　ソルジャ？
　そるざ？
　モンスターやっつけるの？
　……つけるの？

　クラウド君、なかなか逞しくなったわね。
　頑張れ〜。
　ガバレ〜。

　………。

　ここは……俺の家だ。五年前の事件とは関係ないな。
　でもよ、興味あるぜ。
　わたしも！　久しぶり、だったんでしょ？
　聞かせろよ！　家族と会ったんだろ？

　話したくないんだ

　ま、無理にとは言わねえけどよ。

　やれやれ……

　家族って言っても……親父は……俺がまだ子どもの頃に死んでしまった。だから母さんが……この家にはひとりで住んでいた。ああ、俺、母さんに会ったよ。母さんは……元気な人だった。全然変わってなかった。その何日かあとには死んでしまったけど……あのときは……本当に元気だった。

　あの……。
　はーい？　クラウド!?　お帰りなさい、クラウド！
　ただいま、母さん。
　どれどれ……晴れ姿、母さんにもよーく見せておくれ。ふーん、惚れぼれしちゃうねえ。これ、ソルジャーさんの制服かい？
　……母さん、俺。

　本当に立派になってえ。そんなんじゃ、あれだね。女の子もほっとかないだろ？
　……べつに。
　心配なんだよ。都会にはいろいろ誘惑が多いんだろ？　ちゃんとした彼女がいれば母さん、少しは安心できるってもんだ。
　……俺は大丈夫だよ。
　あんたにはねえ……ちょっとお姉さんで、あんたをぐいぐいひっぱっていく、そんな女の子がぴったりだと思うんだけどね。
　……興味ないな。

　ちゃんとごはんは食べてるのかい？
　大丈夫。会社が面倒見てくれてる。
　そうなのかい。あんた、料理なんてできないだろ？　いったい、どうしてるのかと思ってたんだよ。――ねえ、クラウド――でもねえ、クラウド――そうだろ、クラウド――母さんはね、いつだって、あんたの――
　……もうやめよう。

　なあ、あまり……憶えてないんだ。話すことは、もう……ない。
　もういいよ、クラウド。