FF7 MEMORIES

　ねえ、クラウド……わたしの家にも入ったの？

　ああ……

　ティファ、いるかな、と思って。

　いや……

　そういえば、行かなかったな。

　クラウド……わたしの部屋にも入ったの？（ああ……／いや……）

　（ちょっと背伸びパンツを手に入れた！）
　クラウド……それ、本当なの？（ああ……／冗談だ、怒るな……）……クラウド、いまは、すごくまじめな話をしているんでしょ？

　手紙だ……。
　もしかして、読んだの？　わたし宛の手紙。

　そんなことはしない！

　そうよね！

　ああ……

　内容も憶えているとか……。

　憶えていない

　それじゃあ、セフィロスの話の続きを聞かせて？

　はっきりと

　おれは読んでしまった……よろず屋の息子がティファに書いた手紙だった……。
『ティファ、元気か？　僕は八日前にミッドガルに着いた。昨日はニブルヘイム出身の仲間たちが集まってくれたんだ。あ、クラウドだけは連絡先がわからなくて呼べなかったけど。でも、あいつはもともとみんなと仲がよかったわけでもないし、きっと呼んでもつまらないから、まあ、いいんじゃないかってみんなと話してた。うーん、クラウドの話をしてもしょうがない。ミッドガルはすごいところだ。僕ははっきり言って遅れていて、ダサダサのなんとかって感じだった。スラムの人たちでさえ、部屋のなかはとてもきれいなんだ。いまはお金がないからスラムに住んでいるけど、いつかは本で見たようなおしゃれな部屋に住んでやるつもりだ。……などと書いてみたが、そのためにはまず仕事を見つけなくちゃいけない。そうなんだ、まだ仕事、見つからないんだ。両親には神羅カンパニーで働き口が見つかったって嘘の手紙を出してしまった。もう後戻りはできないかな。実家のよろず屋を継げばよかったなと思う』
　ねえ、クラウド……それ、全部憶えてるの？

　いや、ここまでだな

　それじゃあ、セフィロスの話の続きを聞かせて？

　なぜか最後まで憶えている

　俺のことが書いてあったからかな……。
『ミッドガルに着いたばかりなのに、考えるのはニブルヘイムのことばかりなんだ。ねえ、ティファ、あのおんぼろ給水塔はちゃんと動いているか？　宿屋の爺さんは元気か？　僕の両親は毎日店を開けてるか？　モンスターは襲ってこないか？　なにより、ティファ、どうしてる？　もう何年も会っていないような気分だよ。昨日もみんなでティファの話で盛りあがった。みんなティファが好きなんだ。でも、ティファはみんなのアイドルだったから、仲間を裏切ることができなかった。なーんてカッコつけてたけど、本当は告白してふられるのが怖かっただけなんだよ。あ、これ以上書くとラブレターになってしまう！　だから今回はこのへんで。じゃあ、元気で。また手紙書くよ。P.S.　返事、すごく欲しい』

　わたしのピアノを弾いたの？

　いや、弾かなかった
　ギンギンに弾いた

　どうやって弾くんだったっけ。（忘れた／覚えてる）［FF7メインテーマを弾いたとき：　どこかで聞いたメロディ、なんとなくうまく弾けた……］

　ちょっとだけ

　俺だって楽譜ぐらい読め……えっと……ド……レ……ミ……シ……ラ……ド……レ……ミ……ソ……ファ……ド……レ……ド……いいや、もう。

　……ふむふむ、モンスター退治にやってきた神羅の人間だな？
　あんたは？
　私はザンガン。世界じゅうの子どもたちに武術を教える旅をしている。弟子は世界中に百二十八人！　この村ではティファという女の子が私の弟子になった。
　ティファだって？
　ティファはセンスがいいな。彼女は強くなるぞ。

　神羅の戦いぶり、しっかり見せてもらうよ。使えるようだったら、ザンガン流格闘術に取り入れるのもいいな。ま、しっかりやってくれ。

　あ……本日は神羅会社のみなさんの貸し切りになってましてねえ。……？　クラウドちゃん？　クラウドちゃんかい？　二年ぶりかねえ。セフィロスさんの部下なんて、大出世だねえ。ほんとにい。なんだい？　クラウドちゃん。

　セフィロスは？

ああ、二階にいるさあ。

　泊めてくれ

貸し切りだから構わないよ。でも、自分ちのほうが落ち着くんじゃないかい？

村の様子を聞かせてくれ

村のことねえ……モンスターちゅうのが増えてきたのは、ここ一年くらいかねえ。それ以外はあんまり変わんないよ。こんなちっこい村なんて変わりようないさあ。あの魔晄炉造ってる頃がいちばん華やかだったよ……造ってる頃はねえ。完成してからはだめさあ。何年もしないうちにお山の木、枯れちゃったもんねえ。魔晄炉なんてねえ、よかったのかねえ、悪かったのかねえ……。悪かったちゅうのは簡単さあ。でも、いまさらねえ……とりあえず、モンスターたちがいなくなればねえ。そうすりゃ、ちょこっとはよくなるさあ。［二度目：　何度話してもいっしょさあ。聞きたいかい？（聞かせてくれ／いや、もういい）］

「なにを見ている？」
「この風景、俺は知っているような気がする……」

　……明日は早いぞ。そろそろ眠ったほうがいいな。

　まだ早いよ

明日は起こさないからな。

　ああ、そうしよう

魔晄炉までのガイドを手配しておいた。若い娘らしいが、頼りにしていいものか……。

　ベッドがひとつ足りない……。

　なんだい、クラウドちゃん？

　セフィロスは？

……あんたのほうがよく知ってると思うけどねえ。

　はいはい、いらっしゃい。ねえねえ、あんたは……。

　行ってらっしゃい。

　写真撮らせてくれるかなあ。
　こんなことなら、山歩きなんて禁止しておけばよかった……。
　……また遅刻だな。
　なんか緊張してさあ、眠れなかったんだよな、俺。

　おい、落ち着け！　こっちで待ってろ。

　おい、こっちに来ていろ！

　………。

「ガイドが来たら出発だ」
「セフィロス、聞いてくれ。もしものことがあったら……」
「……安心してくれ」
「大丈夫だから、パパ！　つよーいソルジャーさんが二人もいるのよ。ティファです。よろしくお願いします！」
「ティファ！　あんたがガイド？」
「そういうこと。この村で一番のガイドといえば、わたしのことでしょうね」
「でも、危険すぎる！　そんなことにあんたを巻きこむわけにはいかない！」
「おまえが守ってやれば問題なかろう。……では、行こうか」
「あの……セフィロスさん！　記念に写真を一枚。ティファちゃんからも頼んでくれないかな……。行きますよ〜！　はい、どうも！　写真できたら、みなさんにあげますからね！」
「魔晄炉はニブル山のなかに建てられていた。ニブル山の寒々とした空気、変わっていなかったな……」

　おまえにこんなことを頼むは腹が立つが……ティファのそばから離れるな！　さっさと娘のそばに戻ってくれ！
　セフィロス、なにしてる？
　ああ……休みたいのかい？（頼む／なんでもない）お金はもらってるから、ゆっくりおやすみ。
　おっ？　泣きながら帰ってきたのかな？

「さ、ここからが大変よ！　ついてきて！」

　早く行こうぜ。

「は、橋が!?」

「無事のようだな。もとの場所へ戻れるのか？」
「このへんの洞窟は蟻の巣みたいに入り組んでいるから……それにセフィロスさん、ひとり、姿が見えないけど……」
「冷たいようだが、捜している時間はない。さあ、戻れないなら先へ進むぞ。これからはいっしょに行動する」

「これは？」
「不思議な色の洞窟ね……」
「魔晄エネルギーだな。この山は、特にエネルギーが豊富なのだ。だから魔晄炉が造られた」

「……これは？」
「魔晄の泉。自然の驚異というやつだな」
「こんなにきれいなのに……このまま魔晄炉がエネルギーを吸いあげつづけたら、この泉も消えてしまうのね」
「マテリアだ。魔晄エネルギーが凝縮されるとマテリアができる。天然のマテリアを見るなんて滅多にない機会だ」
「そういえば……どうしてマテリアを使うと、魔法を使うことができるんだ？」
「そんなことも知らずにソルジャーをやってるのか？……マテリアのなかにはいわゆる古代種の知識が封じこまれている。大地、星の力を自在に操る知識。その知識が星と我々を結びつけ、魔法を呼び出す……と言われている」
「魔法……不思議な力だ……」
「ハハハハハ！」
「なにか変なこと言ったか？」
「ある男がな、不思議な力なんて非科学的な言いかたは許さん！　魔法なんて呼びかたもダメだ！　そう言って怒っていたのを思い出しただけだ」
「誰だ、それ？」
「神羅カンパニーの宝条。偉大な科学者の仕事を引き継いだ未熟な男だ。コンプレックスのかたまりのような男だな」
「魔晄の泉……このなかには古代種の知識が入っているのね」