FF7 MEMORIES

「なんだ、この村は？　やけに寂れているな……」

　おんやあ、珍しいねえ。神羅以外の人間がこの村にやってくるなんてねえ。あんたたち西の大陸に行きたいんだろうけど、神羅の船に乗るしか方法がないよ。
　戦争中にい……神羅が上の街を造ってからあ……ゲホゲホ。魚もお……さっぱり獲れんわ！　海が汚れてしもうてな……ふぅ。

　ここはどんなところだ？
　なんだね、あんたたち？　どこから来たんだい？
　黒いマントの男を見なかったか？
　さあ……そんな人、とんと見かけんねえ。ここはなーんにもないよ。昔は賑やかな港だったけどねえ。

　コラッ！　神羅カンパニーのエレベーターだ。うろうろするな！

　欲しい武器があったら、買っていっておくれ。
　わしが欲しいのかい？

「ねえ〜！　イルカさーん！　わたしの名前はプ〜リ〜シ〜ラ！　はい、言ってみて。あなたたち誰なの？　もしかして神羅の人間？」

　違うわ、安心して。
　違うの！　わたしたち、神羅と無関係なのよ。
　神羅とは相性が悪いな。
　失礼なこと言うんじゃないよ！　神羅なんか大っ嫌いさ。

「……というわけなんだ」
「信用できないわ、出ていって！」

　おい！　あれを見ろ！
　あれはなにっ？
　おい、モンスターだ。
　おわっ、大変だ！

「イルカさんが危ない！」
「助けるぞ！」

「まいったな……もしかしたら、死んでしまったのか？」
「プリシラ！　ダメだわい……呼吸しとらん……おっ、あれじゃ！　若いの、人工呼吸じゃ！」
「人工呼吸って？」

　クラウド、任せたぜ。
　クラウド、どうするの？
　クラウド、早く！
　私には無理だな。
　クラウド、やれ〜！

「あ、いや、あの、女の子だし」
「なんだ？　知らんのか〜？　教えてやるからこっちに来なさい」
「……仕方ない」
「とにかく息を大きく吸いこんで、限界までに息を止める。そして、その息を口移しするのじゃ。早くするんじゃ！」

「う、うーん」
「ほほっ！　大丈夫か、プリシラ？」

　すまんな、クラウド君、プリシラは少し休ませなくちゃいかんのじゃ。

「ちょっとお入り。話は聞いたよ。プリシラが世話になったね。あんたたちも疲れただろ？　休むんなら、ここを使っておくれ。ゆっくりしていっておくれ」

　ちょっとばかりくつろがせてもらおうぜ！
　休んでく？
　休もっか？
　休むのか？
　おやすみかい？

「そうだな……。（やっぱりあとにしよう／ひと休みしよう）」

「……そういえば」
「またあんたか？　あんた誰だ？」
「……そのうちわかるさ。……それより五年前」
「五年前……ニブルヘイム？」
「あの時……ニブル山へ行ったとき、ティファがガイドだったよな」
「ああ……驚いたな」
「でも、それ以外、テイファはどこにいたんだろう？」
「……さあな」
「せっかく久しぶりに会えるチャンスだったのに」
「……そうだな」
「どうしてふたりきりで会えなかったんだろう？」
「……わからない。はっきり憶えてないから……」
「なあ、ティファに訊いてみろよ」
「……ああ」
「さあ、起きろ！」
「ねえ、起きて、起きてったら、クラウド！」
「ティファ……おれとセフィロスがニブルヘイムに行ったとき、ティファはどこにいた？」
「……会ったでしょ？」
「それ以外の時間だ」
「うーん、五年前なのよ。憶えてないわね。それより、外の様子が変なの。早く来て、クラウド」

　ここ数十年、耳に入ってくるのは神羅のことばかりなんじゃ。魚の話ばかりをしていた昔が懐かしいねえ。

　なんだか上のほうが騒がしいな。
　ねっ、なんだか様子が変でしょ？　急に騒がしくなって。
　女の子が目を醒ましたらしいの。
　この騒がしさは、神羅となにか関係があるのかもな。
　なんだい、この音楽は？　うるさくて頭に来るよ。

「もう大丈夫なのか？」
「あのう……助けてくれて、ありがとう……神羅のやつらと間違えちゃって、ごめんね……」
「構わないよ」
「お兄ちゃんに、いいものあげる！　海のお守りなのよ。大事にしてね」
「この音楽はなんだ？　ずいぶん賑やかじゃねえか」
「これは神羅の新しい社長の歓迎式のリハーサルだと思う」
「ルーファウス!?　これは挨拶に行かなくちゃな」
「ここはね、祖父ちゃん祖母ちゃんが子どもの頃には、とてもきれいな海岸だったって。でも、神羅が上の街を造ってから陽も当たらなくなったし、海も汚れちゃって……そんな話を聞いて育ったから、わたし、神羅が憎らしくてしょうがないの」
「ルーファウスも、ここから海を越えるつもりなのかな？　あれっ？　それじゃ、セフィロスはもう海を渡っちゃったってこと？」
「クラウドよ、ルーファウスにとどめを刺さなかったのか？」
「なんとかして、上の街に行きてえな。柱でもよじ登るか？」
「ダメダメ！　柱の下は高圧電流が流れてるの。むやみに近づいたら危険よ。でも……イルカさんの力を借りればなんとかなるかな。ちょっと来て」
「高圧電流の柱ねえ……こういうことはクラウドがうまくやってくれるのよね」
「そうね、あの子のことはクラウドに任せましょ！」
「任せたぞ、クラウド」
「おっ、おい！　ちょっと、待てよ！」

　神羅の新しい社長さんの顔を拝んでみたいぜ。

　嫌よね。
　そうよねえ。

　むこうにいるのは神羅の兵だな。
　あの子についていかないのか？

「お兄ちゃん、ちょっと見ていて」
「見せてもらったぜ、イルカのジャンプ。すごいもんじゃねえか！」
「すごいでしょ！　このホイッスルを吹くとイルカさんがジャンプしてくれるの。はい、ホイッスルをお兄ちゃんにプレゼント」
「ぷ、プレゼントって……どうしろっていうんだ？」
「海に入ってホイッスルを吹くとイルカさんが柱の上までジャンプさせてくれるわ！」
「柱の上までジャンプだって？」
「柱の上のほうに棒が突き出ているの。位置を合わせてジャンプすれば、棒に乗って上の街まで登れるはずよ」
「クラウド、頑張れよ！　おまえがうまくやったら、オレたちも行くからよ！　おっと、それにPHSも預かっておいたぜ。濡れたら壊れちまうからな」

　イルカさんとジャンプしてみる？

　もう一回説明してくれ。
　やってみる
　やめておく

イルカさんに会いたくなったら、また来てね。

　ワシが生きているあいだには……ゴホッ、戻ることはないんじゃろうな……昔のような……きれいな海には。