ちょこぼのパルス探訪

クリアしちゃった？

Ｃ：　「どうしてそうなるのかわからないけど、どうやらコクーンを救ったらしい」
Ｓ：　「そうか」
Ｚ：　「で？」
Ｃ：　「疲れた……」
Ｚ：　「おまえなあ」
Ｃ：　「いや、ごめん、ほんとにごめん。でも、ほんとに疲れたって気分しかなかったんだってば！　ラスボスやりながら、え、これで終わり？　世界の秘密は？　おれたち、ファルシの支配から人類を救うんだっ、っていうノリで、これから冒険するんじゃないのか？　ええっ……って混乱したままスタッフロール見てたよ」
Ｓ：　「……ネットであちこちでブーイングが起こっているようだが、おまえもか」
Ｃ：　「ああ、うん、初見はね。正直、いい話なのに、見せかたがまずいと思った。キャラの情報は小出しにしてもいい、でも世界の構造や成り立ちなどの情報まで小出しにしたら、キャラたちの基盤も倫理観もなにもわからないから感情移入できないよ。下界とコクーンの位置関係が把握できるのも11章になってからっていう、とんでもない設定。これ……ほとんどの人がついていけないと思う。少なくとも世界地図は必要だな。前半は本当に目的もわからず曖昧なまま、目的地がどこを指すのかもわかない状態で、そのくせ一本道を進めさせられてるから、完全強制っていう感じが強いんだ。自由度がないっていうのはそういうところだと思う」
Ｚ：　「でも、ちゃんとここまで行けばイベントあるよって、マークがついてたじゃないか」
Ｃ：　「そういう意味じゃない。目的地というものは、そこへ辿りつくための理由が必要で、その場所が世界のどの位置にあたるのかっていう存在感が必要なんだ。RPGには必ず、そのダンジョンに足を踏み入れる理由はちゃんとあっただろ。FF13はシナリオがダンジョンを支配して、プレーヤーを目隠し状態にしている。自分がどこにいるのかわからなくて示唆された道順をただ進むしかないっていう状態で、その先がどこに出るのかもプレイヤーにはわからない。それでも進まざるを得ない。な、夢の中でぼんやり歩いてるのと変わらないじゃないか」
Ｓ：　「そういうものか……？　だがスートリーも一本道だと叩かれているだろう」
Ｚ：　「そりゃ、RPGはみんなそうだろ。マルチエンディングだとかあるものだって、ラストがちょっと違ってくるっていうだけだし」
Ｃ：　「そうそう、ストーリーがかっちり決まってるのは、それは関係ない」
Ｓ：　「だが不満はあるのだろう」
Ｃ：　「うん。どうしてこんな話しかできなかったんだろうっていう不満はある」
Ｚ：　「おまえ……ひどいぞ」
Ｃ：　「うん、我ながらひどいと思うけど、でもほんとに正直に言う。ストーリーじゃなくてシナリオがひどいと思った。初めて見る人にまったく不親切だ。ストーリーはいいのに」
Ｓ：　「ストーリーはいいのか？」
Ｃ：　「いいと思わないか？　ただそこにいただけという理由で世界の敵にされて、逃げまわりながら世界の秘密に触れ、この理不尽な支配から脱却しようっていう反骨精神！　いい話じゃないか。ただシナリオの構成がな……10-２に似てるんだ。以前にあったことを振り返りながら現在との関連を考えていくっていう、あれな」
Ｚ：　「けど、10-２はプレイヤーも経験したことのあるものを思い出しながらっていうものだっただろ。そんなこともあったなあって頷けた」
Ｃ：　「そうなんだよ。まったく知らない話で感情移入できないまま、いま現在いるダンジョンとはまったく関係ない独白をカットインで見させられながらっていうのは、よっぽど愛着のあるキャラでないと耐えられないもんだ」
Ｓ：　「それで？　ただ文句ばかりか？」
Ｃ：　「そういうわけでもない。このストーリー、エンディングを迎えてやっとこさ、世界観を把握できる造りになってるんだけどさ。その世界観をもって二周めをやると、意外と感動するところもある」
Ｚ：　「もう、二周めやってみたのかよ」
Ｃ：　「うん。まだ序盤だけどな。そして驚いたことに、ノラ母ちゃんのシーンで、おれは泣いた！　二回めだっていうのに」
Ｚ：　「はあ……ああ、もう登場人物たちの世界基盤がわかってるから、母ちゃんの行動も理解できるってわけかい」
Ｃ：　「そういうこと。ほら、あのシーンて、パージがどういう意味を持ってるのか、まったくわかってないときじゃないか。だから母ちゃんが自分から銃を取ったときに、なんで？　っていう疑問ばっかり頭にあってさ、落下していったときも、あんまり感動なかったんだよ。やっぱり死んじゃったじゃないか、馬鹿、ってぐらいにしか思わなかった。けど世界の構造がなんとなくわかったいまでは……母ちゃああああん！　あんたは偉いっ！　ってわけだ。再プレイのほうが感動できるよ、このゲーム」
Ｓ：　「厳しいことを言うようだが、二周めでやっと感情移入できるというのは、それは作品としてどうなのだ。FF７など、泣きながらジェノバと戦っていたではないか」
Ｃ：　「誰のせいだよ。まあ確かにそういう批判にもなるんだけどさ。強くてニューゲームもないし、無理に二周めをやる人がいるかどうか……けど、途中で疲れて諦めかけて、それでもまだ楽しみたいっていう未練がある人は、頑張ってクリアしてから二周め、お話を楽しんでみたらどうかな。バトルにも慣れてるはずだから、ゲームに対する気持ちに余裕できてると思う」
Ｚ：　「そうか、むしろスピード感のありすぎるバトルに振りまわされて、ストーリーに集中できないって問題もあるってことか」
Ｃ：　「おれはそう思う」
Ｓ：　「つまり、バトルに面食らっているプレーヤーでもすんなりと頭に入ってくる世界観をなぜ作らなかったのかと、おまえは文句を言いたいわけだな」
Ｃ：　「うっ……そう、とも言うっす」
Ｚ：　「ティーダの真似すんな」
Ｃ：　「でもでも、シナリオが設定倒れしている感は否めなくないけど、あの世界設定はなかなかいいと思うぞ。地球へ…を彷彿とさせる」
Ｓ：　「ファルシをマザーに例えればな。類似としてマトリックスか」
Ｃ：　「うん。人間しか出てこないしな。あの世界で亜人がいっぱいいたら、まったく新しい世界だと思えるけど」
Ｚ：　「亜人好きだな」
Ｃ：　「好きだぞ。だから冥碑の連中は気に入ってる」
Ｚ：　「あれ、亜人か？」
Ｓ：　「むしろ石化人だと思うが」
Ｃ：　「いいじゃないか、みんな、どこかしら愛嬌があるぞ。全部同じ姿だというのに、こう、個性があるんだよな」
Ｚ：　「まあ、そうかもしれねえけど……」
Ｓ：　「結局、平原はお気に入りか」
Ｃ：　「むろんだ。さあ、11章をめざして再プレイ行くぞ！」
Ｚ：　「二周め、エンディングまで行く気がねえな、こりゃ」
Ｓ：　「どうかな。ミッションコンプリートはラスボスクリア後、クリスタリウム最大解放して限界まで育てんと、きついらしいぞ」
Ｚ：　「正直、おれにはあの数字の大きさにはついていけねえんだが……」
Ｓ：　「9999カンストの時代は過ぎ去ったということだろう。どこまでインフレが進むのだろうな」